メニュー

「もうこれは治りませんね」という医者はヤブ

[2023.10.07]

いきなり暴論のようなタイトルになってしまいました。

かつ、私自身が「もうこれは治りませんね」に近いことを全く言っていないか、というと決してそんなことはないため、私自身もヤブに含まれてしまうという話でもあります。

「もうこれは治りませんね」が医学的にも正しい状況である場合も確かにあります。

神経内科領域で言うと神経変性疾患は現在の所、一部を除き有効な治療法がありません。このような場合本人及び家族に、予後の見通しを伝え、長期的に疾患を向き合って生きていく覚悟を持っていただく必要があります。他科疾患でもこのような状況はたくさんあるでしょう。

問題はそのような場合ではなく、医師が自らの経験をもとに「これはもう治りませんね」という場合です。

これは医師の実感としてそう言うということもあるでしょうし、責任回避的な要素もあって、「治らないものだからいくら通っていただいていてもよくならないかもしれませんよ」というエクスキューズがあると思っています。

このことの何がまずいのかというと、「もう治りませんね」と言われることによって、患者さんが大いに傷ついてしまい、治そうとする意欲を失ってしまうことです。

「病は気から」は真実であり、人間の体はいまだに自然治癒力に回復の大部分を担ってもらっているため、「気」の部分が落ちてしまうと、治るものも治らなくなってしまいます。少なくとも東洋医学的にはそうです。

医師の皆さんは過去の経験をもとに、自信を持って「これはもう治りませんね」と言っていると思います。

しかし問いたいのは、「あなたがこの疾患を診たのは何人ぐらいですか?」ということです。

数十人、多くて数百人、全国で数十万人患者さんのいる疾患についても大体そんな感じでしょう。それは全体を表しません。

ですから、断定的なものの言い方は避けた方がよいと考えます。

事実、他の医師で「もう治りません」と言われた人が、東洋医学や鍼灸、または他の療法などでよくなることもしばしばあります(いつもうまくいくわけでは当然ありませんが)。そんなことを言っても信じない医師も多いでしょうが。

ただし回復にかなりの時間を要する、または予想としてはやっぱり難しいだろうな、と思うことはやはりあります。

その場合も「治りません」と断定はせず、患者さんがそのことを受け入れるまでじっくりと付き合っていく必要があると考えています。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME