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自然派ワインはワインではない

[2023.12.25]

かなりの年になるまでワインとは全く無縁の生活を送っていましたが、相方が大のワイン好きだったため、近年つられてワインを飲むようになりました。ただ飲むだけでは面白くないしできるだけ美味しいものを買いたい、ということで、ぼちぼち色々な情報を得るようにしています。最近ワイン関連でこのような動画を見つけました。

(283) 日本の自然派ワインの現状について。炎上覚悟で語る! - YouTube

過激そうなタイトルですが、内容は「日本では自然派ワインが持て囃されているが、実際は醸造に失敗したり、葡萄の質もよくないなど、欠陥ワインが大量に出回っており、外国からは欠陥ワインのゴミ捨て場のような目で見られている」というもので、まあ以前から言われてきたことではあります。この程度の内容が「炎上覚悟」になるとしたらワイン業界、相当金持ち喧嘩せずな業界になっているはずです。一言で言ってぬるい。

(自然派ワインのなかには素晴らしいワインもたくさんあることはワインを飲んだことがある人ならご存じだと思うので、以下、自然派ワインというのは、「実は美味しくないのに持ち上げられている欠陥ワイン」と定義します。こうした自然派ワインは、酸っぱくて味に奥行きがなく、しかも変な味がします)

ワインをけなすということが、紳士淑女のたしなみとしてどうなのか、というマナーのようなものがある気がしています。例えば友人との集まりでワインの持ち寄りをした時、彼氏とレストランでフレンチを食べる時、ワインがおいしくないと思っても、「まずい」とはっきり言える人は少ないのではないでしょうか。いたとしたら相方のように「プチ雄山」などのあだ名をつけられてしまうはずです。ということでワインがまずくても、通常そのことは提供側にフィードバックされません。

そういう「批判がタブー」なハイソ・ワイン界においては、ソムリエや批評家まで「ワインをけなすのはマナー違反」な空気に染まっており、なおかつセルサイドの人とメディアが業界とみっちり癒着しているなどの理由で、そもそも誰も本当のことを言わない土壌がすでに形成されています。たまに「王様の耳はロバの耳」という人がいると空気を読めない人扱いされ、そういう人はいくら知識があってもメインストリームになりません。そして、メインストリームの人の意見がメディアを席巻するわけです。(一方で、素人が匿名で本音を書くSNSはかなり混沌としています。)

しかし、そうした批判タブー要因があるにしても、なぜ日本人はそんなに自然派ワインが好きなのか?

いくらワイン界の人が本当のことを言わなかったとしても、ソムリエや消費者がまずいと思えば売れないはずなのに、東京には「自然派ワインとお料理の店」がたくさんあるとのことです。日本人は味が分からないということなのか?

また、ワインショップに行って「自然派のワインって実は醸造に失敗したようなワイン多いですよね」と店員さんに言うと、「そうなんですよね~うちはいいものをちゃんと選んでますから」と答えるので、そこで店員さんのお勧めワインを買うとまたそれが自然派的な意味でまずいということがよくあります。言葉の意味が本当にわかっているのでしょうか。

亜硫酸無添加、濁ったり澱が舞ったりと色々ある自然派ワインが日本でなぜ人気なのか?ということを自分なりに考えてみると、

①日本人は以前からボジョレーヌーヴォーなど熟成の浅い、新しいワインが好き。日本食は魚介など新鮮さを売りにするものが多く、その延長でワインも新しいものがよい、という発想がある。多くの自然派ワインは熟成に耐えられないため新しいものが市場に出回り、早飲みがデフォルト。とりあえずアイドルでもワインでも何でも未完成のものが好き。

②日本には発酵食品がたくさんあり、熟成度合いもさまざまのため、熟成についてのストライクゾーンが広め。醸造の失敗も「個性」と捉えてしまい、かつ失敗したワインであればあるほど「農家さんも一生懸命作ったんだから」と妙にやさしくなってしまう。

③自然派ワイン=体にいいという思い込み。とくに亜硫酸塩無添加ワインは「頭痛がしない」「二日酔いしない」などと売り込まれてきた経緯あり。実際には頭痛も二日酔いもします。

④ソムリエやワインエキスパートの味覚の偏り

この中で④の問題がかなり根深いと考えています。プロ向けのワイン会に参加した人に話を聞いてみると、酸っぱくて葡萄が早摘み、いいとこないようなワインを多くの若手プロが本気で絶賛している場面に何度も遭遇するそうです。

酸味というのは慣れるもので、コーヒーなども一時サードウェーブ系の酸っぱい珈琲が流行りましたが、飲み慣れるとむしろおいしく感じるのが酸味で、酸味のバリエーションにも色々な気づきが出てきますし、酸が弱いとむしろ物足りない気がしてきます。

この酸味に慣れすぎたプロがほとんどだというのが私見です。

ワインだけを飲むのであればそれでもいいと思います。問題は食事と一緒にワインを飲むときです。

フランス料理、イタリア料理ならまだしも、和食に酸っぱいワインは絶対に合いません。よく、酸味のあるワインに酸味のない料理を合わせるという発想がありますが、実際にやってみると逆で、酸味のある料理に酸味のあるワインを合わせる方がよいです。

和食にも酸味のあるものは色々ありますが、日常の食卓では、酸味のない料理の方が多いはずです。ソムリエと称する人達の中には、普段の食事にワインを合わせて色々研究している人もいると思いますが、舌が酸味に慣れすぎていて料理とワインが合っているかどうかきちんと評価できないか、実は料理とワインを別々に味わっている人かのどちらかではないかと思っています。

ソムリエの集まりの様子を聞いていても、レストランでは「自分の飲みたいワインを注文し、その時の料理と合うかどうかはあまり気にしていない」みたいなこともあるようです。つまり日本のソムリエと称する人達がワインを飲むシチュエーションに鈍感すぎて単なるワインオタクになっているのではないか、という懸念が以前からありました。

そのようなワインオタクのソムリエにイメージ戦略で自然派ワインを勧められ、お店としては「自然派ワイン」の看板を挙げれば客が入ると思ってコンセプト化し、客はメディアやSNS情報を見てそうしたお店に行く、という構造です。もしくは動画でソムリエがお勧めしていた「自然派ワイン」を買って家でご飯と一緒に飲み、「合っているかどうかはわからないけどまあこんなもんか」と自分を納得させてSNSに写真をアップするなど。

ソムリエや専門家の役割は重要です。ここが間違うとやはり変な方向に行ってしまうのです。

料理とワインの相性についてソムリエはもっと真剣に考えてほしいし、ソムリエ試験はワインの知識と紙で覚える料理の知識だけでなく、より実践的な内容を試験に盛り込んだ方がいいのではないかと思います。

 

では、欠陥ワインではなく美味しいワインであれば、和食に合うのか?

という問いですが、和食によく合うワインもあるものの、どこでもすぐに買えてあまり考えずに使えるものは少数であると考えています。魚料理にはやはり日本酒がいいです。すぐに買えてあまり考えなくても食事に合わせられます。また、日本人が大好きな唐揚げにはやはりビールが合いますし、チーズも実はワインよりビールが合うと思います。ワインの専門家は何にでもワインを合わせようとしますが、それはすでにワイン万能論的イデオロギーになってしまっています。

個人的には、和食に合わせるには色々限界がありますが、中華料理にワインはよく合うと思います。中国酒のバリエーションがもともとそこまで豊富ではないこともあり、ワインの出番は多いにありそうです。

…ということで、レストランで飲んだワインがまずかったとしても、それはあなたの味覚が間違っているということではなく、店側の問題が大きい可能性が高いという話をここまで長々と書いてきました。

最後に、個人的に気に入っているワインショップを少し挙げておこうと思います。売っているものすべてがいいわけではありませんが、他と比較して個人的にはいいと思うものが多いです。

The Winery Tokyo

南アフリカワイン通販のアフリカー (af-liquor.com)

商品一覧ページ | SHUNABE(シュナベ) | 輸入ワイン専門店  (一部)

(番外)地酒屋こだま:もっと自由に日本酒を!頑張る蔵を応援する小さな地酒専門店 - 地酒屋こだま:人を繋ぐ縁の日本酒 (jizakeyakodama.com)

 

 

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