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紅麹サプリ

[2024.03.27]

小林製薬の紅麹サプリを服用した複数の方に腎機能低下が見られ、死者も複数出たことが大きく報道されています。お亡くなりになった方には心からお悔やみを申し上げます。

今回のことでサプリメント業界は大激震だと思います。もとからサプリメントに否定的な医師は、さらにサプリメントに警戒し、患者さんには買わないようにと説明するでしょう。それで何か不都合があるかというとそもそも不要なサプリメントが多いのであまり困らないのですが、中には必要なものもありますので、業界があまりに縮小すると多少は困るかもしれません。

薬も医療も、必ず一定の副作用を伴いうるものです。漢方外来をやっていると「漢方には副作用がない」と思って来院される方が多いことに気づきますが、出てほしくない効果が出る場合があるという意味では漢方にも当然副作用があります。サプリメントは薬というよりは食品に近く自由に買えるものですが、体になんらかの作用を起こすものでもあり、販売に際して何かの効能をうたっている以上は、一定のリスクはあると思って服用した方がよいでしょう。

それにしても、今回のニュースを見た私の第一印象は、「何故サプリメントでコレステロールを下げようと思うのか」ということです。コレステロールを下げようと思ったら食事療法と運動が基本です。それでなかなか下がらなければ、スタチンなどの薬を使って下げればいいと思います。

薬でコレステロールを下げることに抵抗のある人は多いと思いますが、そういう人は基本に戻って食事と運動を頑張るのが最適解です。前述のように薬にはリスクがありますが、例えばコレステロールを下げる薬であるスタチンは(実はこれも真菌から発見された成分)すでに市場に出て30年以上経っており、世界中で多くの人が服用しています。副作用報告も詳細に出ています。

副作用報告がきちんと出ているものの方が実は安全です。どのような副作用がどの程度の頻度で現れ、どういう管理をすればリスクを減らせるかがわかるからです。しかしマスコミなどでスタチンの副作用がクローズアップされた結果、薬を飲みたくない(けど食事制限も運動もしたくない、もしくはしているつもりで実はできていない)人がたくさん出てきてしまいました。そういう人が頼るサプリという立ち位置にはそもそも問題がありますし、万が一有害事象が起きた場合のデータが十分にありません。

紅麹サプリについては欧米で安全性の問題が以前から指摘されていたようで、日本の食品安全委員会も2014年3月にこのことについての記事を出していました。モナコリンKやシトリニンなどが欧米におけるサプリ摂取後有害事象の原因とされていますが、今回の小林製薬のサプリメントに含まれていた原因物質はシトリニンではなく「未知の物質」とのことです。後出しの意見にはなりますが、微生物が出す物質にはまだよくわかっていないものも多いと思われ、特にカビ(真菌)類の代謝産物としてはカビ毒などもよく知られていることから、そうしたものを抽出したものの摂取にはより一層の慎重さが求められるべきでした。

死亡例の年齢や基礎疾患、サプリ摂取との因果関係などはまだ不明ですが、もし高齢者だったとしたら、そもそもコレステロールを下げる必要があったのかどうかも問われるべきでしでしょう。特に超高齢者であった場合、コレステロール値を下げることの恩恵はそこまでないものかもしれません。コレステロール値を下げることと健康がしばしば混同されているように思えます。

実は最近、小林製薬の該当サプリを服用していたという方が来て血液検査をしました。年齢などの詳細は伏せますが、腎機能も問題なく、コレステロール値もそれほど高くなかったので、20日分で2000円ぐらい(年間36000円程度)のお金を払ってまで服用する必要もなかった可能性があります。

薬や医療、コレステロールなどに関するさまざまな誤解が今回の事故を産んでしまったように思います。

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