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性同一性障害の定義

[2023.07.16]

私が子供の頃、というともう40年ぐらい前の大昔、1970年代になります。当時のことはそこまで覚えていませんが、今にして思えば差別の多い時代でした。女性差別は当然あったし、外国人差別、関西では部落差別、性的少数者差別、容姿差別などの各種差別が今よりも色濃くありました。

今回議会で可決されたLGBT関連法案に反対する保守派の中には、「LGBTに対して昔の欧米や今のアラブ、アフリカでは場合により死刑になるぐらいの差別があったが、日本は昔から戦国武将とお小姓などの関係もあり、性的少数者に寛容な社会で差別などなかった」と主張する人がいますが、死刑にはならなかったにしても当事者が多大な精神的苦痛を受けるような差別というのは、私は日本にも存在していたと思っています。ただ、差別をする側がそのことに非常に鈍感であったということはあるでしょう。

問題の深刻さが違うとはいえ、運動神経が極端に悪かった私は、子供の頃からそのことをバカにされ、ちょっと太れば容姿をけなされ、結果、その後の人生前半に多大な影響を及ぼすほど精神的な負担を強く受けてしまいました。バカにしている側は勿論まったくそのことに無自覚でした。また、同時代にmad TVという米国の番組があり、正直今みても面白いのですが、とはいえ黒人差別に満ちた番組でした。今では絶対放映できません。そういう時代だったのです。

そのような目で今の時代を見ると、差別が前よりは少なくなっていい時代になったと思う点と、逆にこれで大丈夫なんだろうかという点と、両方あるわけですが、時代の流れであり従うしかないところがあります。子供の私が今の時代に生きていたら、もっとまっすぐに育っていたでしょう。女性であることで受ける不利益も少なくなりました。自分がそのように今のわりと平等な社会を享受しているわけですから、同時に受け入れるべきこともやはりあるはずです。

一部の保守派が、「変質者が女子トイレに入ってもそれを犯罪であると言えなくなる社会」は日本の崩壊につながると非常に危惧しているわけですが、そういうことになったら確かに女性には大変な不利益です。しかしそれは女子トイレや銭湯にとって、または女性にとっては大きな問題ですが、なぜそれが日本の崩壊につながるのかについて彼らは明確な説明をしません。ここをきちんと説明できない所が、彼ら自身が「社会の何を保守するべきか」について、実は非常にあいまいな考えしかないのではないかと疑われる点だと思います。

そしてそのあいまいさは、非常に危険であると個人的に考えています。

今回のLGBT関連法案と時期を同じくして出てきたのが、経産省のトランスジェンダートイレ使用訴訟です。これについても、色々な話が出ていますが、個人的に比較的同意できそうな見解を出していたのが、丸山穂高さんのyoutubeライブでした。判決の効力は限定的なものです。

とはいえ職場トイレの使用を最高裁まで持っていった原告には明らかに社会に訴え、社会を変えていこうという意思を感じます。保守派はこのムーブメント感に反発していると思います。

今回の件で示された一つの論点は、丸山さんも指摘するように、法的に規定された性同一性障害の定義だと思います。「子供がいないこと」「生殖腺を欠くこと」を定義とし、それ以外を性同一性障害と認めないという態度であれば、これは人権にかかわる問題となります。今回の判決は、この定義に合致しなくても原告の状況から性同一性障害を認めたことになります。(そもそも性同一性障害という用語がどうなんだ、という話はここでは割愛)

「生殖腺の機能を廃絶する手術」は倫理的問題も大きく、手術を受ける側のリスクや経済的、精神的負担もかかるものです。あくまで自分の固い意志で手術を受けるのであればいいと思いますが、これを性同一性障害の要件にしてしまうのは、要するに例えば「切ってしまうぐらいの覚悟ができていれば女と認めてやる」などという、非常に前近代的な思想を感じてしまいます。

また、性別適合手術を受けたあとに後悔する人もかなり多いという話を聞いたことがあります。私自身は、リスクの高い手術やホルモン治療などはとくに未成年者には極力行わず、その人の性自認はそのまま認めるというようにした方が、体の負担も少なく後でリカバリーもできるので、その方がよいと考えています。

従ってオリンピック参加などは、基本元来の性別で判断されるべきでしょう。

数年以上考えたうえで手術を行いたいという人がいれば、手術をすればいいと思いますが、それにも至らない、男か女かはっきりしない「性の曖昧さ」というものを、変態案件や性的指向などとできるだけ切り離して社会が真の意味で受け入れることができれば、日本も崩壊しないで済むと考えています。(笑)

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